【感想】村上春樹【アフターダーク】少しずつ非日常へ誘う、不思議なストーリー。

本&映画

こんばんは。

最近村上春樹にハマりかけているので、こないだ読み終えた『アフターダーク』の読書感想文を書きます。


アフターダーク (講談社文庫)

スポンサードサーチ

内容をざっくり

タイトル通り、深夜の時間帯に街で起こっている出来事を時系列順におった小説です。

深夜のデニーズの客席で一人、分厚い本を読む少女。そして彼女に話しかけるバンドマンが登場します。

バンドマンはとてもいい人で、彼女に以前会ったことがあるようです。自分を覚えているかと聞き、少し話をしてから深夜練に出かけてしまいました。

そしてそのすぐ後にデニーズに飛び込んできた大柄な女。彼女も悪い人ではなく、気さくな人物のようですが、少し慌てています。ラブホのスタッフである彼女は、事情を後で話すからと彼女に助けを求めます。

自分の店に少女を連れていき、彼女に中国語の通訳を要求し始めました…(彼女は中国語が少し話せます)。

少し、てんやわんやしている物語という印象を受けますが、物語は別の視点から展開していきます。

この少女の姉、という人物を監視する視点が同時進行で描かれているのですが、彼らが何者なのかよくわからないまま進行するのはなかなか気味が悪いです。

そして、謎が何も解決しないままお話は結末を迎えてしまいました。

感想の雑記

村上春樹のなかでは異質なストーリーに分類されるのでしょうか。他の作品に登場する、日常から少しずつフェードアウトしてファンタジックな世界観が入ってくる十八番的展開がありませんでした。

でも、東京の夜の雰囲気を奇妙にリアルに描いている作品だとも思いました。中国マフィアやラブホスタッフなど少しアングラな方々も登場しますが、そうした人々の生活がカタギの方々の生活と表裏一体になっている様子が説得力あります。

現実世界・異世界という二項対立の代わりに、昼と夜に陰と陽の比喩を代替させているのでしょう。

そして、そんな世界観を体現するかのように、前述のバンドマン青年は法律を勉強し始めることを少女に伝えます。

ここに出てくる「法律」は、二項対立を判定する基準としての意味を指しているでしょう。

なんだか、何を表している小説なのかよくわかりませんでしたが、モヤモヤと内容に関する謎を転がすのも悪くありません(笑)。

個人的にはかなり好きな小説です。

The following two tabs change content below.