【あらすじ・感想・映画化】アイネクライネナハトムジーク|伊坂幸太郎|出会いをテーマにした珠玉の短編集。

本&映画

僕は伊坂幸太郎先生の大ファンなのですが、

伊坂幸太郎さんが人気作家として変わっているところとして、恋愛要素が極端に少ない、というところがあると思います。

しかし、今回紹介する『アイネクライネナハトムジーク』では伊坂作品には珍しく、恋愛要素、それも「出会い」にフォーカスした珠玉の短編が描かれています。

そしてそれは、伊坂ファンにはおなじみですが、短編集に見せかけ、互いのストーリーがリンクしていく連作になっています。

アイネクライネナハトムジーク…ドイツ語で、小さな夜の音楽。

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各編のあらすじを簡単に紹介。

アイネクライネ

サラリーマンの佐藤氏が、友人の織田夫妻と話しています。

本書の序章を飾るのにふさわしい、コンセプト的な意味を兼ねた章。

佐藤氏の上司、藤間氏は雑な性格が原因で妻と離婚し、それが原因で仕事で致命的なミスを犯します。

結果的に佐藤氏がそれをリカバリーする役回りに。

織田夫妻の夫の方、織田一真氏は宣言する型の熱男で、他の伊坂作品のキャラクターだと

『チルドレン』の陣内氏、

『ギャングシリーズ』の響野氏

に近い感じの人物です。

ライトヘビー

織田夫妻の妻の方、織田由美氏の高校の同級生、美奈子氏は、自身の美容室の常連客・板橋香澄氏の弟を紹介され、「メル友」(死語?)ならぬ電話友達になりました。

顔の見えない同士の付き合いでしたが、相性もよく、関係は進展していくのか…?

弟のまさかの正体に注目です。

ドクメンタ

織田夫妻の友人・佐藤氏の上司である藤間氏の話。

彼はズボラな性格が災いして妻に逃げられましたが、同じ原因で夫に逃げられた女性と5年に1回免許の更新で顔を合わせます。

その女性は藤間家よりも展開が進展していて、藤間氏は彼女の話を聞きながら自分の状況の好転に期待を持ち始め…。というお話。

ルックスライク

織田夫妻の娘の美緒氏と、彼女の高校の同級生・和人氏がセコいおじさんを追いかける話。

と、それと並行して全く別の男女の模様が描かれます。

短編としての完成度が個人的に一番好きで、

「さすが伊坂先生!」

と興奮し、膝を連打しました。

織田夫妻の娘の美緒氏と、「ドクメンタ」の藤間氏の娘の亜美子氏が高校で同級生になっているというのも面白いですね。

メイクアップ

メーカーに勤める窪田結衣氏は、広告会社との打ち合わせの場で高校時代のボス猿、小久保亜希に遭遇。

彼女に復讐をすることを同期にオススメされるが、絶好のチャンスが回ってきたときに彼女はどう決断したのでしょうか…?

ナハトムジーク

本書の真骨頂で、時空間ともに入り乱れ、これまでの登場人物のほとんどが軽やかに結びついて、元チャンピオンに希望を与える感動話です。

「これだけ複雑な人間模様をよくまとめあげたなあ…」って思います。

こちらもどうぞ。

映画が公開されます。

2019年9月20日に全国ロードショーで、

主題歌はもちろん、斉藤和義さんです。

あと、伊坂ファンとして嬉しいのが、宮城県で先行ロードショー(2019年9月13日)というところです。

伊坂さんといえば仙台ですからね!

https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/(映画の公式サイト)

まとめ

恋愛をテーマにしていることは伊坂幸太郎さんとしては珍しいですが、構成の秀逸さはさすが伊坂さんです。

読んでて不自然な感じも全くせず、全ての物語を鮮やかにつなげながら心温まる結末へと丁寧に導かれていきました。

本作が好きになった方は、こちらもオススメです。

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