【感想・レビュー】重力ピエロ|伊坂幸太郎|なぜ彼らの絆はこれほど強くなったのか。

本&映画

こんにちは。

中学3年生の時に伊坂幸太郎先生の作品にどハマりしていた時期があって、新潮文庫・講談社文庫・角川文庫を読み漁っていました。大学生になった今読み返しても、改めて感じることの多い作品ばかりです。

その中でも、今回紹介する『重力ピエロ』は何回も読み返した、特に思い入れが強い作品です。

重い作品ですが、伊坂幸太郎先生の優しさが詰まった、家族愛を綴る作品なので、伊坂作品の入門者は避けて通ることはできないと思います。

それでは、ご紹介です。

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あらすじ

毎年夏に発表される「新潮文庫の100冊」という小冊子にほぼ毎年掲載されている作品なので、伊坂作品にどハマりする前からタイトルは見知っていました。本屋さんでも平積みされていることが多いので、表紙を見たことのある方も多いのではないでしょうか。

仙台を中心に発生する連続放火事件。現場には必ず、不可解な英単語を描いたグラフィティアートが残されています。

遺伝子系の会社に勤める主人公の「泉水」は、イケメンな弟の「春」とともに犯人と謎に挑戦しますが、彼ら家族に関する重要な描写も本作の大きなテーマになっており、全てがつながるラストは筆舌に尽くしがたいものがあります。

彼ら兄弟は実は血が繋がっていないのですが、実の兄弟以上の絆を見せる彼ら2人には、豪胆な父の存在がありました。

放火・遺伝子・グラフィティアート。なんの関係もなさそうなこの3つのキーワードが絡みつき、物語は急展開します。

本文の最初の文章と最後の文章にも注目して読んでみてください。

作中の名言集

伊坂作品の魅力の一つに、随所に光る名言の数々があります。もちろん本作にもいくつも気に入ったフレーズが出てくるので、いくつか紹介してみます。

「僕とお兄ちゃんは最強なんだ」

幼い頃の「春」が運動会で「泉水」に向かって言う場面です。単純に、かわいい!笑

「ふわりふわりと飛ぶピエロに、重力なんて関係ないんだから」

兄弟の母が、サーカスで兄弟に向かって説く場面です。これを読んだとき、『砂漠』に登場する大学生、西嶋のセリフを思い出しました。

「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」

いろんな作品の随所に見られる考え方なんですが、伊坂先生は不可能なことなどないと考えている節があります。信じて行動することの原動力になる強力なメッセージです。

「どうして知りたいんですか」「人生の充実のために」

本作で全ての謎が解決したのちの、「泉水」と黒澤の会話です。

黒澤は好奇心旺盛な泥棒で、なににもとらわれることなく自分の行動力と頭脳だけで人生を切り開く人ですが、そういう人が抱く好奇心の源泉のエッセンスが全てここに詰まっていると思います。

個人的に一番気に入っている箇所

文庫版のP.94〜95の見開き部分です。ここに関してはあえて説明を入れませんが、ただ

「伊坂先生、ありがとう。」

という感情が湧き、泣きました。一言で言うなら、救済のシーンです。

同じく、P.454〜456も本書の要です。ここは、感動という言葉で表しきれない、記憶に残る重要なシーンです。

友情出演の登場人物

伊坂ファンには有名な話ですが、伊坂作品には別の伊坂作品の登場人物が随所に登場します。いわゆるスピンオフですね。

「あれ、この人あの作品に出てきたような………………………」

ファンにはたまらないかつ、しっかりと押さえておきたいポイントなので本作にスピンオフ出演した登場人物を見ていきましょう。

彼らの元作品も要チェックです!

黒澤

伊坂ファンにはおなじみの優秀な泥棒で、本作では主に探偵として事件に関わります。非常に多くの作品に登場しているので、ハマったら何回も出会うことになりますよ〜

泉水が出会った青年(伊藤)

本作では名前が明かされませんが、『オーデュボンの祈り』でコンビニ強盗を働いて島に迷い込んだ青年、伊藤です。「しゃべるカカシ」のくだりが印象的ですね。

『ラッシュライフ』『フィッシュストーリー』などにも登場します。

神様のレシピ

登場人物ではなく、しょっちゅう伊坂作品に登場する概念です。

上記の『オーデュボンの祈り』の中に登場するしゃべるカカシ「優午」や『グラスホッパー』に登場する「鯨」も口にするフレーズです。

エンジン

「春」が自分のグラフィティーアートにつけたタイトルですが、『フィッシュストーリー』中の作品『動物園のエンジン』を思い出しました。夜の動物園に忍び込む、酔狂な作品です。

まとめ

長い文章になってしまいました。ここまで読んでくださってありがとうございます。

独特の世界観から、入りが少し難しい作家さんではあると思うのですが、この記事で紹介した初心者の方向けの作品などを参考にぜひ、どハマりしてください!

それではさようなら。

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