【あらすじ・感想】海辺のカフカ|村上春樹|この作品が伝えたいこととは?【本】

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海辺のカフカは2000年代中ごろに発表され、海外でも高い評価を得ている村上春樹氏の代表作だ。

中学生のころ、同じ部活の先輩が読んでいたことで作品を知ったが、今になってようやくそれを読んだので感想を書こうと思った。

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内容と読書感想文

物語の構成としては、2人の人物を同時進行させた2軸構成の形をとっており、物語終盤で両者の運命がクロスする。

15歳の誕生日を迎えた田村カフカ少年は家出をする。家での動機は、『オイディプス王』(ギリシャ悲劇の最高傑作として名高い)のあらすじになぞらえた、謎めいた呪いから逃れるため。彼は必要なものを持って四国に逃れ、とある図書館にたどり着いた。

一方、知能に障害を持つ老人、ナカタさんもある事件に巻き込まれ、名古屋で出会った若者とともに四国を目指す。不可思議な能力や言動をいくつか携えながらも周りの人々を引き込む魅力がある。

ストーリー展開だけでも普通に面白い作品だが、本作が通常の小説と一線を画しているのは登場人物の心情描写と、作中で多用されるメタファー(隠喩)の存在だろう。

心情が事細かに都度描かれているわけではない。むしろ、彼らは敢えて沈黙しているように見える。まるで、沈黙から伝えたい内容を想像してくれ、と言わんばかりに。

彼らのバックグラウンドは様々で、それぞれ思いを抱えながら静かに日々を送っている。しかし静かな日々が永劫続くわけではなく、人々の思いが交錯する中でストーリーは展開していく。

作中にはメタファーが多い。実際、登場人物たちのセリフ中に「メタフォリカル」というワードが何回か登場している。誰、あるいはある存在が、なんのメタファーになっているのかイメージしながら読まれると一層楽しいと思う。

カフカ少年の人生は、ある意味でオイディプス王の筋書き通りになったが、それも「ある意味」にすぎない。それのどれもが、実際に起こったことなのかどうか、敢えて輪郭をぼかして書かれている。

ナカタ老人の探していた「石」も、結局どういう意味をもつものだったのか判然としない。ファンタジックな世界観の中で、説明らしき表現は存在しているが。

オイディプス王について

さて、先ほど出てきたギリシャ悲劇の最高傑作、『オイディプス王』だが、この作品は精神分析学の祖、フロイト先生の「エディプス・コンプレックス」の具体例としても有名だ。エディプス・コンプレックスに関しては、『ブラック・ジャック』にもそれに言及した作品があるので、いずれまとめたい。

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