2017年にマンガ化され再び脚光を浴びた名作、『君たちはどう生きるか』。中学生のときに初めて本作を読んだが、記憶に残しておきたい表現が多かったので、人生で初めて本に書き込みをするということをした。
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内容をざっくり。
15歳の少年コペルくんが級友とのかかわりの中で自分を見つけていく話で、彼が尊敬する叔父のノートに叔父から見たコペルくんの成長が記録されており、それも読者に共有される。
児童文学の形を取ってはいるが、大人もぜひ読むべき作品だと思っている。
物語は語り手が主体的な生き方を読者に提起して完結するが、これが1937年という時期に児童文学の形を取って出版されているという意味についても考えてみたい。
勝手な感想
個人的に一番感動したシーンは、主人公のコペルくんこと本田潤一くんが「コペルくん」になったシーンだ。
該当シーンは、コペルくんと叔父さんがデパートの屋上から街を見下ろすシーンに当たる。コペルくんは自分が高いところから世界を見下ろしている一方で、向かいのビルにいる人々もまたこちらをじっと見ているのではないかという違和感・恐怖心を感じる。
そして、地上を歩く人々、ビルの中にいる人々がそれぞれに生活をもち、それぞれ全く違ったことを考えていて、どれほど近くに当人たちがいても互いの本心はつかめないことを認識する。
叔父さんはコペルくんが他者の視点も意識できるようになった成長を発見して感動し、これをカントの「コペルニクス的転回」になぞらえて彼を「コペルくん」と命名した。
こういったコペルくんの成長エピソードが心理描写豊かに描かれているのが本作だが、このシーンで私は内省的な感情を抱く。
大人になった読者諸氏は青年期に「コペルニクス的転回」を経験されているだろうが、どうだろう。他者の感情を慮ることは常日頃できているだろうか。
自分中心に宇宙が廻っているわけではないと知識としてはもっていても、広範な宇宙から自分のその振る舞いがどう映っているのかを本当に認識できている大人は、かなり人間ができている方ではないだろうか。
そして、そんな謙虚さを持ったうえで「君たちはどう生きるか」という問いに毅然と答えられるような、主体的なあり方を選択できるなら、そうありたい。「どんな大人になりたいか」という問いもここでは同義だろう。
だが、この作品が描かれているのは1937年、日中戦争開戦の年だ。治安警察法・治安維持法・特高警察などは既に存在し、言論弾圧始め実存主義的な生き方を選択することは困難な時代だったと思う。国家のための個人という考え方が主流だった時代だ。そしてその考え方は、教育を通じて幼少期から刷り込まれる。
年若い読者に向けて本作が書かれたことを意識すると、また違った読み方ができると思う。現代、そしてこれからの時代はどんな時代だろうか。誰かによる監視・統制が進むのか、はたまたリバタリアニズム的な個人・自由至上主義の風潮が高揚していくのか。
本作がマンガ化を通じて現代に復活し、多くの人に共感を呼んだことに希望を見たいと思った。

Lin

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