【あらすじ・感想】古都|川端康成|四季折々の京都と美しい日本語【書評】

本&映画

こんにちは。文系学生のLinです。

何回か京都に行ったことがありますが、現代では世界中に【Kyoto】の名が知れ渡っているため、良くも悪くも人がごった返していますね。

古都・京都の魅力は1000年の悠久の歴史を持ちつつ、四季折々バラエティ豊かな顔を見せてくれるところにあると個人的に思っています。

今日は、そんな京都の美しさを描き上げた日本人初のノーベル文学賞受賞者・川端康成の名作の紹介です。

スポンサードサーチ

あらすじをざっくりと。

移ろいゆく四季の中で描かれる本作の舞台、古都・京都。

美しく成長した20歳の千重子は、幼い頃に両親から捨てられた過去を持つ。境遇を背負いながらも彼女は、育て親に十分な愛情を注がれ、幸福な生活を送っていた。

そんなある日、彼女は幼いころ離れ離れになった生き写しの妹、苗子との邂逅を果たす。肉親の情に苛まれ、初めて会ったと思えないほどの感情を互いに抱えることを認識しながらも、二人が育ってきた環境はあまりにかけ離れており、永遠の時を共にすることができない。

千重子に憧れる近所の機織り職人の青年たち周囲の人間との関係も丁寧に描きながら、彼女たちの心情描写が雅な情景と相まって、みんなの心を丁寧に浄化してくれる、そんな作品。

感想もざっくり。

あまりに美しい情景描写が印象的な作品です。四季の京都が順繰りに巡ってきて、時に応じて主人公二人を取り巻く環境が巡っていきます。

物語中盤で登場する、千重子の実妹、苗子ですが、彼女の健気さにとても心打たれました。

千重子のことを心から慕いながらも名前で呼ばず、「お嬢さん」と呼び続けたり、千重子の幸せに水を差すようなことをしては申し訳が立たないと、深く彼女の人生に介入しようとしなかったり、自分の千重子への慕情と、それとは両立し得ない面目に葛藤しながら、なんとか彼女自身の中で折り合いをつけようとしているように見えます。

苗子は、お嬢さんの、おしあわせに、ちょっとでもさわりとうないのどす。

川端康成『古都』 苗子の言葉より引用

それの極め付けがラストシーンで、彼女のある決意が行外に著者によって書かれています。

読後に心に鮮烈に焼きついた言葉は、最終章のタイトル「冬の花」でした。本作に合わせて、画家の東山魁夷(かいい)氏が「冬の花」という同じタイトルの作品を描かれているそうなのですが、残念ながら新潮文庫にはそれが収録されていなかったのでぜひ検索して見てみてください。(「東山魁夷 冬の花」で検索すると見られます。)

切なく、美しい作品でした。

余談を少し。

本を読むときはカバーをかけたまま読んだり外して読んだりするのですが、個人的にはカバーを外した新潮文庫の表紙の色や感触が好きで、積極的に外してしまったりもしています。

しかし川端康成先生はじめ、文豪と呼ばれる先生方の作品のあらすじには、本編に負けるとも劣らぬ美しい日本語が並べ立てられているのに最近気づきました(笑)

いかに美しい作品かを力説する上で、自分の語彙も必要ですね。まだまだ美しい日本語を知りません。。。カバーに記載されたあらすじの文章を暗記するほど読み込んだら、流麗な日本語を使いこなせるようになるでしょうか。

The following two tabs change content below.