こんにちは。
東京大学で教鞭を執る歴史学者、加藤陽子先生をご存知でしょうか。
彼女のご専門は日本近現代史で、複雑な当時の歴史を柔軟に紐解く分かりやすさに定評があります。
一般の方向けの著作が何冊かありますが、その中でも読みやすい『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』という作品を紹介します。
2019年の「新潮文庫の100冊」にも選出されている良書で、知っておくべき歴史の流れが満載です。
https://100satsu.com 2019年の「新潮文庫の100冊」
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内容を紹介。
神奈川県に栄光学園という名門私立中高があります。
そして、本書は栄光学園の生徒たちに向けた、加藤陽子先生による連続授業の模様を文字起こししたもので、彼女による講演の詳細を臨場感豊かに書いています。
普段は「中高生」に向けて講演することが多いという加藤先生ですが、今回は鉄は熱いうちに打て、ということで「中高生」に向けて歴史講義が行われます。
もちろん、中高年の方が読まれても歴史認識としてかなり勉強になるところが多いはずです。
本書の構成は6章仕立てで、
序章 日本近現代史を考える
1章 日清戦争 「侵略・被侵略」では見えてこないもの
2章 日露戦争 朝鮮か満州か、それが問題
3章 第一次世界大戦 日本が抱いた主観的な挫折
4章 満州事変と日中戦争 日本切腹、中国介錯論
5章 太平洋戦争 戦死者の死に場所を教えられなかった国
と、明治以降日本が辿ってきた戦争の歴史、つまり破滅への道を各国の視点を豊かに交えながら描きます。
感想−なぜ、日本人は「戦争」を選んだのか
悲劇の歴史を振り返るとき、誰もがこういう思いにとらわれるはずです。
「なんで戦争なんて始めたの?」
「なんで、不利になった時にすぐに降参しなかったの?」
確かに、後から振り返ると、日本政府の選択として明らかに不合理なものがいくつも見られます。
何でそんな歴史を作らなければならなかったんだろう。
もちろん、当時の首脳陣は断罪されるべきです。
ただし、彼らを断罪して終了ではありません。
無辜の市民が大勢犠牲になったという悲劇の歴史を繰り返さないために、なぜその悲劇は起こってしまったのかということを客観的な歴史認識を踏まえてなるべく正確に分析し、アナロジカルな視点を持ち、未来の戦争抑止に生かす必要があります。
その意味で、本書は価値高い作品です。
20世紀以前の戦争は、諸国家の間で対立する利害を巡って行われてきました。
それぞれに言い分があるので、主要だった主義主張、歴史的経緯、当時の世論のあり方などの状況を考慮して分析する必要があります。
本書は
・複雑な情勢と情報量を、単純化することなく整理して伝えること
・分かりやすさ・読みやすさ
の両立に成功していると思います。
誰が正義で誰が悪、といった単純なものではないのです。
本書中でも紹介されるE・H・カーの歴史的名著『歴史とは何か』という本がありますが、この中でカーは
歴史とは歴史家と事実との間の相互作用不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります。
という主張をします。
この本はとても難解なので、僕自身理解しきれていませんが、いずれ再読して紹介したいと思います。
まとめ
事実をあまりに単純化して、「感情ファースト」な世界情勢です。
そんな中で、他者の目からの視点がふんだんに盛り込まれた本書『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』をぜひ一読されることをオススメします。
戦後74年(2019年時点)経過しても、世界は仲良くやっていけているようには見えません。
自分と異なる他者の「内在的論理」を把握して状況を整理し改善するためにも、事実を勉強しておくことは重要です。

Lin

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