【感想・書評】タイムマシン|ウェルズ|タイムマシンに乗りたくなる傑作SF小説。【あらすじ】

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タイムマシン、というものを誰もが聞いたことはあるでしょう。

いまだに実現していない想像上の機械で、時間を行ったり来たりできるものですが、日本ではドラえもんのタイムマシンが有名ですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/タイムマシン_(ドラえもん)

今日紹介するタイムマシンは、ドラえもんの所有物ではなく、

SF小説の元祖、H・G・ウェルズの『タイムマシン』です。

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あらすじ−時間飛行家が見た未来とは

時間飛行家を名乗る男が、物理学者・心理学者・医者・私らエリート達と、物理学と時間旅行について論じています。(彼らの名前は明かされません)

タイムマシンの模型を完成したという時間旅行家は、その「模型」をエリート達の目の前で異次元に送り込みましたが、エリート達はタイムマシンの存在に半信半疑でした。

しばらく期間が空いて、「時間旅行から帰ってきた」と称する時間旅行家が、彼の見てきた80万年後の世界について語る、というのが本筋です。

80万年後の世界の人類は、エロイ・モーロックという2種類の人間に階層分化していました。

恵まれた地上人だったエロイ達は脆弱な美しさをそなえるようになり、地下のモーロック達はただ機械的に働くだけの人間に退化した。

とあります。

地底人のモーロック達にタイムマシンを奪われた時間旅行家は、なんとかタイムマシンを奪還できないかと模索しつつ、未来世界への見聞を深めます。

と、残酷な事実が浮上しました。

ここで書くのはおぞましいので、ご自分で確認されることをオススメします(笑)

ということで、80万年後の世界は、人類は存在しながらも、恐ろしく知能の低下した人たちでした。

それが、社会問題を全て解決した人類が安泰の時代を経た後にたどり着いた場所でした。

時間旅行家はさらに気の遠くなるような未来にも出発していきましたが、退廃的で叙情的な風景が広がるばかりで、人類の影はありません。

エピローグも、かなり面白い終わり方をしています。

短編なので、読みやすいです。

感想−あなたは「時間旅行してみたい!」と素直に思えるか

SFの元祖であり大家であるH・G・ウェルズが本作を発表したのは1895年ということですから、想像力の逞しさに驚嘆するほかありません。

そして、時間旅行家が語ってくれた未来ですが、彼が見てきた未来は事実なのか、それとも彼の妄言なのかは作中で明言されません。

そして、一連の物語を聞いた後で、エピローグの「私」の言葉が秀逸です。

文明の増大は愚かさの増大に過ぎず、やがて反動的に人類を破滅させるだろうと彼はいうのだ。そうだとすれば、私たちはそうでないふりをして生きていくしかない。

だが私にとって未来は相変わらず暗黒であり空白である−つまり彼の話の記憶によって、断片的に照らし出されているだけの、広大無辺の未知の世界である。

この事実かどうかわからない壮大な話を聞いた後の反応として、この結論は実に秀逸だと思いました。

「断片的に照らし出されている」というところと、「だけの」というところがいいですね。

つまり作者は、はるか未来の話を紡ぎ出しながら、それを知ったところで現実の生活には影響はほぼない、と結論を下しているわけです。とても巧いと思いました。

さて、この傑作を読んで、あなたは時間旅行をしたいと思いますか?

それとも?

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