【感想】色彩もたない田崎つくると、彼の巡礼の年|村上春樹|村上入門にもオススメのベストセラー長編小説。

本&映画

こんにちは。

今日紹介するのは、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という作品です。

長いタイトルですね。

2013年出版なので比較的新しい作品ですが、今まで村上春樹さんの作品を読んだことがないよっていう方にもオススメの作品です。

それでは、紹介を開始します。

あらすじ

鉄道会社に勤め、駅を作ることを仕事にしている多崎つくるは、2つ年上の女性・木元沙羅と真剣に交際するかどうか決めあぐねていました。

そんなつくるは、高校時代のグループ4人から、原因不明の絶縁を言い渡されるという過去をもっています。

ある時つくるは、沙羅からこう告げられました。

「あなたに抱かれているとき、あなたはどこかよそにいるみたいに感じられた。もし私とあなたがこれからも真剣におつきあいをするなら、よく正体のわからない何かに間に入ってほしくない」

よく正体のわからない何か。

それは、つくるの過去でした。

当時の事件と向き合うために、彼ら同級生たちを巡礼し、原因を探ることを沙羅から勧められ、つくるは同級生の「アカ」(赤松慶)、「アオ」(青海悦男)、「クロ」(黒埜恵理)、「シロ」(白根柚木)らを訪ね始めました。

感想

あらすじの項目で言及したように、同級生4人はみな色を名前の中に持っています。

その中で、多崎つくるは「自分には色がないんだ」と、ナンセンスながら、なんとなく気になるコンプレックスを抱いています。

そんな中で突然仲間たちに絶縁され、絶望しかけていたところで灰田、という2つ下の男と友人になりました。わずかな期間だけ。

灰田がつくるの前から忽然と姿を消してしまう描写にも色々と読み方があると思いますが、クロとシロという二人の女性に対する漠然とした恋愛感情を濁らせてしまい、あえて男性に投影した、いわばつくるの創出した幻影だった可能性があります。

村上春樹さんの作品は、いくつもの謎が提示されながら、それら伏線を回収せずに収束していく、というか発散していくところに読みどころがあると思いますが、本作も伏線が散らばったままで、好きな人には好きな作品だと思いました。

僕は好きです。

関連作品

いろんなところで指摘されているように、本作はアメリカの小説家、ポール・オースターの『幽霊たち』という作品を意識して書かれた作品だと言われています。

こちらもぜひチェックしてみてください。

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